Date: 11 Oct 2007
Place: Belmont
Purpose: ベンチャーキャピタリストインタビュー
People: 大澤 弘治様
(三菱商事、その後Global Catalyst PartnersのFounder)
※掲載にあたり大澤様の了解を頂いています
Impressed words:
Ⅰ「徳ってのが重要なんだな、人徳ってのが」
Ⅱ「外で名前の売れる人間になれ」
Ⅲ「諦めなければ、何か起こるんじゃない?」
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Index
1 大澤 弘治さん
2 キャリア形成
3 起業の心得
4 新社会人へのメッセージ
5 感想
A Global Catalyst Partners
B ベンチャーキャピタルの仕組
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1 大澤 弘治さん
慶応大学、東北大学院で電気工学を専攻し、三菱商事に入社。2年目には取引会社の電機メーカーでICを開発。その後、現場で半導体のどぶ板営業を2年間経験。後に、フィリピンや台湾への日系企業誘致に従事。当時情勢不安だったフィリピンへの投資はほとんどの企業が消極的だった。
そんな中、日本中を駆け回りヤマハの誘致に成功。0から始めたフィリピン工場は3年でオペレーター数千人にまで拡大した。その後に本社に戻ったが、本社以外での活動を望み93年にはシリコンバレーへ駐在。その時も0からのスタートで、テクノロジー系のベンチャー立上げに関わる。駐在5年で年商$200milの売上を打ち立てた。
この頃、Mr.Kamranから一緒に事業を始めないかと声をかけられ、三菱商事を退社しネットバブル真っ只中のシリコンバレーに残りGlobal Catalyst Partnersを創業(Mr.Kamaraはシリコンバレーで10社のハイテク企業を立上げ、うち3社をIPO、1社を売却しているシリコンバレーの伝説的アントレプレナーの一人)。現在300億円を運用するGlobal Catalyst のゼネラル・パートナー。
2 キャリア形成
会社に入って5年目頃に、そこから10年間のキャリアパスを考えられたそうだ。三菱商事時代のキャリアとしては以下の3つを考えられたようだ。
ⅰ 海外で経験をつむ
ⅱ ゼロから何かを始める
ⅲ 子会社に出向してマネジメントを経験する
ⅲは時間がなくてできなかったが、その他は全て実現されたようだ。これらの経験の中で得られたことをお聞きした。
ⅰ 海外で経験をつむ
「海外では、人脈ゼロのところからもう一度始めて自分に何ができるかを試せたことがよかった。海外では三菱商事の看板が日本ほど役に立たないし、アメリカではただ仲良くなるだけでは仕事を一緒にできるようにはならない。バリューをデリバーしないと始まらない。自分の力を試せたことは大きかった。」
ⅱ ゼロから何かを始める
「ゼロから生み出すには数字がゼロだから最初はとても辛い。数字を出せというプレッシャーがあり2,3年は嫌な気持ちの中やり続ける。それでもでも諦めずにやり続けると結果が出るというプロセスを学べた。このプロセスを何度かやらせてもらえたのは大きかった。
三菱商事をやめて、ゼロからファンドを始めたときもこの学びが大いに役立った。1号ファンドは99年のネットバブルまっただ中に立ち上げ、当時新興VCが100も200もあった。2号ファンドを立上げたのは9・11の直後2001年11月だった。この時バブル期にできた数百のファンドの中で生き残ったファンドはたった数社。GCPが生き残れたのは諦めなかったからだ。」
このように過ごした商社マン時代に得たことで今もっとも役に立っていることは何ですか?→「人脈を作る術」
何をするにも1人では何もできない。ビジネスにおいてクオリティーが高く自分のバリューを認めてもらえる人脈をどれだけ持っているかが重要。そういった人間関係や人脈を作るすべを商社時代に学んだ。
その他にキャリア形成の中でやってこられたことはありますか?→「自分の市場価値を意識するようにしていた」
外で認知されることを意識してヘッドハンターには会うようにしてこられたようだ。これは転職のためではなく会社の中での評価価値と社会での市場価値をチェックするためだそうだ。自身の実力を客観的に評価すると如何程のものか、という思いからチェックしておられたそうだ。「外に名前の売れる人間になれ」というお言葉を頂いた。
3 起業の心得
文系であることが不利に感じているようだが、働いて5,6年すれば文系か理系かなんて関係なくなる。「好きこそ物の上手なれ」で好きなことをやっていればどれだけでもできる。逆に金もうけのためだと思っていれば、2・3年したら続かなくなる。起業したら大変なことばかり。
「Day to Dayで何が起こるかだよ」うまくいっている会社は年ベースだとホッケースティックに成長している。クウォーターだと業績推移はでこぼこしだす、マンスリーだとぼこぼこ。中にいる人は業績が下降傾向にある時の危機感が非常に強い。
「俺もうダメじゃないのか、このままゼロになっちまうんじゃないか」ってダメな瞬間を如何にマネジし続けていけるかで、ホッケースティックに成長していく。やっている本人は「全てが順調」なんて体感はなくて、素晴らしいことと、頭の痛いことでは比率は1:50くらい。普段は頭が痛いことの方が多い。でもその辛いことをやるからこそ価値を出し続けられる。
4 新社会人へのメッセージ
「最初の5年間が非常に重要」
5年でその人のビジネスに対するスタイルが形成されると思う。そこで頑張れなかったら、後々頑張ると思っても頑張れなくなる。つまらないこともたくさんやらされると思うが、その中に自分の将来に役立つ意義を見出して自分をエンカレッジしていってください。内なるテンションを高めて頑張ってください。
「謙虚にやっていく、人徳を身につける」
どの会社も、上に行けば上に行くほど人格者で腰が低く丁寧。入社して5年くらい経てば中身のあるやつとないヤツの差がでてくる。虚勢をはるのではなく、謙虚にだけど、しっかりとバリューを出して外から認められる人間になってください。
「頭でわかって、気持に響く」
日本がもっとイノベーティブになって、世界で競争力を持つには若いあなたたちの世代次第なんですよ。私も含めて現在の30代後半以降の世代は、エスタブリッシュメントとしての刷り込みがなされていて頭ではわかっても、気持ちに響かない。今の若い世代はアントレプレナーシップという意味では「頭でも理解し、それがすんなりと気持ちにも響く」最初の世代。頑張ってください。
大澤さんの信念「諦めないこと」
最初のファンドの立ち上げ時は当初何ヶ月もお金が集まらなかった。その時カムランさんに「やっていれば、ちょっとづつ近づくんじゃない?諦めなければ、何かがおこるんじゃない?」いわれ続け、実際そうなった。松下幸之助の成功の秘訣「成功の秘訣は、成功するまでやめない事。」正しいという信念があったら続けていれば何かがおこるよ。
5 感想
言葉に厚みと、重みのあるとてもかっこいい方だった。お忙しい中、学生の私たちに2時間近くも付合っていただき、さらにとても謙虚かつ的確にアドバイスをしていただいた。輝かしトラックレコードを築きあげられた裏にはある想像以上の苦労を垣間見ることもできた。
そして、成功に必要なことが「広い視野をもって一生懸命、誠実に仕事に取り組み人との信頼関係を築いていく」という奇策のない方法なんだということを強く印象付けられた。働くにあたっての一番基本的姿勢を教えていただき、生涯を通じて生かしていこうと思う。
大澤様、お忙しい中まことにありがとうございました。
Additional information about Venture Capital in SV
A Global Catalyst Partners
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投資手法(投資対象、ファインディング、判断軸、)
①投資対象:シード・アーリーステージ
②ファインディング:自分の知っている人や紹介から来る案件への投資が多い。シード・アーリーではモノも売上もないのでファウンダーの数人がどれだけ優秀かをよく知っていること、紹介筋が信頼の置けることなどが重要となってくる。
③投資判断軸:一般的に「人・市場・技術」といわれる。GCPの場合は「人・市場」を重視
「技術」シードアーリーではリスクが高い。技術を開発できるのか、ソフトができるのか、サービス開始できるのか、スケールできるのか。やってみないとわからない。商品があって売上げの立っているレーターステージなら判断軸にできるが、初期段階では難しい。
「市場」正しい市場にアドレスしているのかが重要。市場のサイズが十分に見込めるのか。優位性がはっきりして、マーケットがビックになるのかを重視されるとのこと。(一番成功するのはマーケットリスクをとる場合のようだ。
具体的にはヤフー、シスコなどのように今ないマーケットで、将来大きくなる可能性の高いものへの投資である。思ったとおりのタイミングでマーケットができれば大成功だがマーケットの成立が3年遅れると会社が潰れる。物はできましたが売れませんでした、という失敗例が多い。存在しないマーケットなのでとるリスクが難しいようだ)
「人」大澤さんは人を一番重視しておられるとのこと。市場重視の場合は、人のマネジメント(ファウンダーをクビにして、他からCEOを呼んできたり)が大変なうえうまくいかないことも多い。しかし、トラックレコードなりレピュテーションがすごい思う人に投資する場合は安心して見ていられてる上、たいていうまく行くようだ。
B ベンチャーキャピタルの仕組み
「ファンドの資金調達」「VCのバリュー」「ステージごとの役割分担」「VCのジレンマ」「マーケットインベンチャーの重視」「金は出すが、口もだす」「日本とシリコンバレーのベンチャーの違い」
「ファンドの資金調達」
GCPでは1号ファンドは$50milのサイズで、うち70%を日本企業からの出資。現在の3号ファンドは80%が世界中の機関投資家による出資だ。機関の場合$20,30millのロットで出資する。だが機関は立ち上げたばかりのファンドにはトラックレコードがないため普通出資しない。そのため、自分の人脈からお金を集めるしかない。1号ファンドへの日本企業からの出資は商社時代に培った大澤さんへの信頼に対しての出資だ。
「VCのバリュー」
セコイヤのような有名VCはどのベンチャーもウェルカム(お金を入れてもらっただけで、知名度が上がりビジネスに結びついたり、資金調達がやりやすくなるため)だが、若いVCの場合、ベンチャーにどれだけバリューを提供できるかがベンチャー側にとっての魅力となる。そのためハンズオンでボードに入って手厚いサポートを十分に行う。そこがVC同士での差別化にも繋がる。
「ステージごとの役割分担」
シード、アーリー、グロース、レーター、バイアウトと企業の成長には段階がある。同様にVCにもどのステージを強みに持つかが異なる。これはフェーズによって見るポイントが異なり特化するほうがメリットが強みを生かせるからだ。企業側もシードの時はこのVC、レーターではあのVCとポートフォリオを組むことが多い。
「VCのジレンマ」
うまくいっている会社はハンズオンでも時間をかけなくてすむ。ダメ会社ほど時間がかかる。ハイリターンはうまくいっている会社から得られ、ダメな会社はコストプラス、なのにリターンの低い会社に時間をかけなければならない。
「マーケットインベンチャーの重視」
市場の流れを読んでサービスを作るベンチャーと、技術を元にサービスを作り市場に提供するビジネスでは、VCにとっては前者の方が出資しやすい。プロダクトアウト(後者)はサービスイメージを持たずに始める場合が多く失敗しがち(大学発ベンチャーなど)。加えて、製品化までに時間がかかる傾向があり比較的短い期間でクローズするファンドからの投資には不向き。
「金は出すが、口もだす」
出資企業に対しては、ファウンダーがCEOとして不適格と考えた場合クビも言い渡す。GCPでは、必要な場合は出資段階でファンダーにCEOを降り別のポジションに移ってもらう交渉をする。
「日本とシリコンバレーのベンチャーの違い」
日本のファウンダーはネット系ベンチャーが多いが、シリコンバレーのファウンダーは技術者が多い。SVにもレッスンラウンドはあった。バブルの頃ピュアリーネット会社がたくさんできた。が、バブル崩壊とともにほとんどがつぶれた。残ったのは基礎技術がしっかりとしていて、その上でネットサービスをしてきた企業だ。
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