Friday, November 9, 2007

シリコンバレーのベンチャーキャピタル② ~商社出身キャピタリストの視点~

Date: 11 Oct 2007
Place: Belmont
Purpose: ベンチャーキャピタリストインタビュー
People: 大澤 弘治様
   (三菱商事、その後Global Catalyst PartnersのFounder)
※掲載にあたり大澤様の了解を頂いています

Impressed words:
Ⅰ「徳ってのが重要なんだな、人徳ってのが」
Ⅱ「外で名前の売れる人間になれ」
Ⅲ「諦めなければ、何か起こるんじゃない?」

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Index

 1 大澤 弘治さん
 2 キャリア形成
 3 起業の心得
 4 新社会人へのメッセージ
 5 感想

A Global Catalyst Partners
 B ベンチャーキャピタルの仕組

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 1 大澤 弘治さん

 慶応大学、東北大学院で電気工学を専攻し、三菱商事に入社。2年目には取引会社の電機メーカーでICを開発。その後、現場で半導体のどぶ板営業を2年間経験。後に、フィリピンや台湾への日系企業誘致に従事。当時情勢不安だったフィリピンへの投資はほとんどの企業が消極的だった。

そんな中、日本中を駆け回りヤマハの誘致に成功。0から始めたフィリピン工場は3年でオペレーター数千人にまで拡大した。その後に本社に戻ったが、本社以外での活動を望み93年にはシリコンバレーへ駐在。その時も0からのスタートで、テクノロジー系のベンチャー立上げに関わる。駐在5年で年商$200milの売上を打ち立てた。

この頃、Mr.Kamranから一緒に事業を始めないかと声をかけられ、三菱商事を退社しネットバブル真っ只中のシリコンバレーに残りGlobal Catalyst Partnersを創業(Mr.Kamaraはシリコンバレーで10社のハイテク企業を立上げ、うち3社をIPO、1社を売却しているシリコンバレーの伝説的アントレプレナーの一人)。現在300億円を運用するGlobal Catalyst のゼネラル・パートナー。


2 キャリア形成

 会社に入って5年目頃に、そこから10年間のキャリアパスを考えられたそうだ。三菱商事時代のキャリアとしては以下の3つを考えられたようだ。

 
ⅰ 海外で経験をつむ

ⅱ ゼロから何かを始める

ⅲ 子会社に出向してマネジメントを経験する








ⅲは時間がなくてできなかったが、その他は全て実現されたようだ。これらの経験の中で得られたことをお聞きした。

ⅰ 海外で経験をつむ

「海外では、人脈ゼロのところからもう一度始めて自分に何ができるかを試せたことがよかった。海外では三菱商事の看板が日本ほど役に立たないし、アメリカではただ仲良くなるだけでは仕事を一緒にできるようにはならない。バリューをデリバーしないと始まらない。自分の力を試せたことは大きかった。」

ⅱ ゼロから何かを始める

「ゼロから生み出すには数字がゼロだから最初はとても辛い。数字を出せというプレッシャーがあり2,3年は嫌な気持ちの中やり続ける。それでもでも諦めずにやり続けると結果が出るというプロセスを学べた。このプロセスを何度かやらせてもらえたのは大きかった。

三菱商事をやめて、ゼロからファンドを始めたときもこの学びが大いに役立った。1号ファンドは99年のネットバブルまっただ中に立ち上げ、当時新興VCが100も200もあった。2号ファンドを立上げたのは9・11の直後2001年11月だった。この時バブル期にできた数百のファンドの中で生き残ったファンドはたった数社。GCPが生き残れたのは諦めなかったからだ。」

このように過ごした商社マン時代に得たことで今もっとも役に立っていることは何ですか?→「人脈を作る術」

何をするにも1人では何もできない。ビジネスにおいてクオリティーが高く自分のバリューを認めてもらえる人脈をどれだけ持っているかが重要。そういった人間関係や人脈を作るすべを商社時代に学んだ。

その他にキャリア形成の中でやってこられたことはありますか?→「自分の市場価値を意識するようにしていた」

外で認知されることを意識してヘッドハンターには会うようにしてこられたようだ。これは転職のためではなく会社の中での評価価値と社会での市場価値をチェックするためだそうだ。自身の実力を客観的に評価すると如何程のものか、という思いからチェックしておられたそうだ。「外に名前の売れる人間になれ」というお言葉を頂いた。


3 起業の心得

文系であることが不利に感じているようだが、働いて5,6年すれば文系か理系かなんて関係なくなる。「好きこそ物の上手なれ」で好きなことをやっていればどれだけでもできる。逆に金もうけのためだと思っていれば、2・3年したら続かなくなる。起業したら大変なことばかり。

「Day to Dayで何が起こるかだよ」うまくいっている会社は年ベースだとホッケースティックに成長している。クウォーターだと業績推移はでこぼこしだす、マンスリーだとぼこぼこ。中にいる人は業績が下降傾向にある時の危機感が非常に強い。

「俺もうダメじゃないのか、このままゼロになっちまうんじゃないか」ってダメな瞬間を如何にマネジし続けていけるかで、ホッケースティックに成長していく。やっている本人は「全てが順調」なんて体感はなくて、素晴らしいことと、頭の痛いことでは比率は1:50くらい。普段は頭が痛いことの方が多い。でもその辛いことをやるからこそ価値を出し続けられる。

 

















4 新社会人へのメッセージ

「最初の5年間が非常に重要」

 5年でその人のビジネスに対するスタイルが形成されると思う。そこで頑張れなかったら、後々頑張ると思っても頑張れなくなる。つまらないこともたくさんやらされると思うが、その中に自分の将来に役立つ意義を見出して自分をエンカレッジしていってください。内なるテンションを高めて頑張ってください。

「謙虚にやっていく、人徳を身につける」

どの会社も、上に行けば上に行くほど人格者で腰が低く丁寧。入社して5年くらい経てば中身のあるやつとないヤツの差がでてくる。虚勢をはるのではなく、謙虚にだけど、しっかりとバリューを出して外から認められる人間になってください。

「頭でわかって、気持に響く」

日本がもっとイノベーティブになって、世界で競争力を持つには若いあなたたちの世代次第なんですよ。私も含めて現在の30代後半以降の世代は、エスタブリッシュメントとしての刷り込みがなされていて頭ではわかっても、気持ちに響かない。今の若い世代はアントレプレナーシップという意味では「頭でも理解し、それがすんなりと気持ちにも響く」最初の世代。頑張ってください。

大澤さんの信念「諦めないこと」

最初のファンドの立ち上げ時は当初何ヶ月もお金が集まらなかった。その時カムランさんに「やっていれば、ちょっとづつ近づくんじゃない?諦めなければ、何かがおこるんじゃない?」いわれ続け、実際そうなった。松下幸之助の成功の秘訣「成功の秘訣は、成功するまでやめない事。」正しいという信念があったら続けていれば何かがおこるよ。


5 感想

 言葉に厚みと、重みのあるとてもかっこいい方だった。お忙しい中、学生の私たちに2時間近くも付合っていただき、さらにとても謙虚かつ的確にアドバイスをしていただいた。輝かしトラックレコードを築きあげられた裏にはある想像以上の苦労を垣間見ることもできた。

そして、成功に必要なことが「広い視野をもって一生懸命、誠実に仕事に取り組み人との信頼関係を築いていく」という奇策のない方法なんだということを強く印象付けられた。働くにあたっての一番基本的姿勢を教えていただき、生涯を通じて生かしていこうと思う。

 大澤様、お忙しい中まことにありがとうございました。

Additional information about Venture Capital in SV

A Global Catalyst Partners

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投資手法(投資対象、ファインディング、判断軸、)

①投資対象:シード・アーリーステージ

②ファインディング:自分の知っている人や紹介から来る案件への投資が多い。シード・アーリーではモノも売上もないのでファウンダーの数人がどれだけ優秀かをよく知っていること、紹介筋が信頼の置けることなどが重要となってくる。

③投資判断軸:一般的に「人・市場・技術」といわれる。GCPの場合は「人・市場」を重視

「技術」シードアーリーではリスクが高い。技術を開発できるのか、ソフトができるのか、サービス開始できるのか、スケールできるのか。やってみないとわからない。商品があって売上げの立っているレーターステージなら判断軸にできるが、初期段階では難しい。

「市場」正しい市場にアドレスしているのかが重要。市場のサイズが十分に見込めるのか。優位性がはっきりして、マーケットがビックになるのかを重視されるとのこと。(一番成功するのはマーケットリスクをとる場合のようだ。

具体的にはヤフー、シスコなどのように今ないマーケットで、将来大きくなる可能性の高いものへの投資である。思ったとおりのタイミングでマーケットができれば大成功だがマーケットの成立が3年遅れると会社が潰れる。物はできましたが売れませんでした、という失敗例が多い。存在しないマーケットなのでとるリスクが難しいようだ)

「人」大澤さんは人を一番重視しておられるとのこと。市場重視の場合は、人のマネジメント(ファウンダーをクビにして、他からCEOを呼んできたり)が大変なうえうまくいかないことも多い。しかし、トラックレコードなりレピュテーションがすごい思う人に投資する場合は安心して見ていられてる上、たいていうまく行くようだ。


B ベンチャーキャピタルの仕組み

「ファンドの資金調達」「VCのバリュー」「ステージごとの役割分担」「VCのジレンマ」「マーケットインベンチャーの重視」「金は出すが、口もだす」「日本とシリコンバレーのベンチャーの違い」


「ファンドの資金調達」

GCPでは1号ファンドは$50milのサイズで、うち70%を日本企業からの出資。現在の3号ファンドは80%が世界中の機関投資家による出資だ。機関の場合$20,30millのロットで出資する。だが機関は立ち上げたばかりのファンドにはトラックレコードがないため普通出資しない。そのため、自分の人脈からお金を集めるしかない。1号ファンドへの日本企業からの出資は商社時代に培った大澤さんへの信頼に対しての出資だ。

「VCのバリュー」

セコイヤのような有名VCはどのベンチャーもウェルカム(お金を入れてもらっただけで、知名度が上がりビジネスに結びついたり、資金調達がやりやすくなるため)だが、若いVCの場合、ベンチャーにどれだけバリューを提供できるかがベンチャー側にとっての魅力となる。そのためハンズオンでボードに入って手厚いサポートを十分に行う。そこがVC同士での差別化にも繋がる。
 

「ステージごとの役割分担」

シード、アーリー、グロース、レーター、バイアウトと企業の成長には段階がある。同様にVCにもどのステージを強みに持つかが異なる。これはフェーズによって見るポイントが異なり特化するほうがメリットが強みを生かせるからだ。企業側もシードの時はこのVC、レーターではあのVCとポートフォリオを組むことが多い。

「VCのジレンマ」

うまくいっている会社はハンズオンでも時間をかけなくてすむ。ダメ会社ほど時間がかかる。ハイリターンはうまくいっている会社から得られ、ダメな会社はコストプラス、なのにリターンの低い会社に時間をかけなければならない。

「マーケットインベンチャーの重視」

市場の流れを読んでサービスを作るベンチャーと、技術を元にサービスを作り市場に提供するビジネスでは、VCにとっては前者の方が出資しやすい。プロダクトアウト(後者)はサービスイメージを持たずに始める場合が多く失敗しがち(大学発ベンチャーなど)。加えて、製品化までに時間がかかる傾向があり比較的短い期間でクローズするファンドからの投資には不向き。

「金は出すが、口もだす」

出資企業に対しては、ファウンダーがCEOとして不適格と考えた場合クビも言い渡す。GCPでは、必要な場合は出資段階でファンダーにCEOを降り別のポジションに移ってもらう交渉をする。

「日本とシリコンバレーのベンチャーの違い」

日本のファウンダーはネット系ベンチャーが多いが、シリコンバレーのファウンダーは技術者が多い。SVにもレッスンラウンドはあった。バブルの頃ピュアリーネット会社がたくさんできた。が、バブル崩壊とともにほとんどがつぶれた。残ったのは基礎技術がしっかりとしていて、その上でネットサービスをしてきた企業だ。
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Monday, October 29, 2007

旅の終わり

シリコンバレーツアー終了。計21名の方々にお会いさせていただき、お話を聞かせていただきました。

シリコンバレーの精神、シリコンバレーのインフラ、起業家に大切なこと、日本でgoogleを作るには、世界・日本がどう動いているのか、プロフェッショナル精神。数え切れないくらいのことを教えてもらった。計24hを超えるインタビューをどう生かすかをこれから1ヶ月近くかけて考えなければ。とりあえず、膨大な量のインタビューをレポートにして得てきたことをシェアできるようにしようと思います。

グーグル本社
 


その後友人Oとの3000Kmを超える4泊5日の長距離ドライブも無事(?)終了。

ヨセミテ
 


ラスベガス
 
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グランドキャニオン
 


特にグランドキャニオンの壮大さには、言葉を失う限り。これまでみた景色の中で一番大きなインパクトをくれた。

 


明日で同時に僕の6ヶ月の海外生活が終わる。半年間がもたらしてくれたのはちょっとだけの英語力とグローバルな視野、そして日本への意識。可能性の広がりと大事なモノができた6ヶ月でした。
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Friday, October 12, 2007

現代アート SFMoMA

 

New York MoMAと同じテイストのミュージアム
Exbisionがデンマーク出身のアーティストÓlafur Elíasson(オラファー・エリアソン)

ジェームズ・タレルを始めとする、光をテーマにするアーティストの1人だが、彼の秀逸なところは 「光と影は一体であり 影こそが光を美しく見せる」 と考えるところだ。タレルとの大きな違いは偶然の美よりも必然の美を生み出す点にある。緻密にアーキテクトデザインされた影の世界の美がある。

 

 

 

 

昨年の1月、原美術館でExibisionがあった。それから2年弱。作品のテイストは光と影のバランスを汲取ったものになっていた。極度なまでに影にフォーカスするオラファーの視点が好きだっただけに少し残念。と、いいつつも久々のヒットExbisionだった。wikiってみたら金沢21世紀美術館にも常設展があるらしい。

 
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MoMAの中で知り会ったLAから来ていたレコード会社で働く自称ピアニストのJake。友達のベーシストとの夕食にjoinさせてもらった。笑いのツボが違いすぎてカルチャーショック。アメリカンな時間をすごさせてもらった。

Tuesday, October 9, 2007

Monday, October 8, 2007

ナパのワイン② Turning Leaf, Pinot Noir 2005 & Crane Lake, Cabernet Sauvignon 2004

 
【基礎情報】
銘柄:Turning Leaf
原産地:Napa valley,CA,USA
品種:PINOT NOIR
年代:2005
価格:$10



3日目に宿泊先で知り合ったヒロと飲むために買ってきた。黒人街にあるデリっぽい店で。カルベネ・ソーヴェニヨンにしようかとも思ったが、SVの方が赤はピノを押していたのでトライ。

感想
ボジョレーを思わせる若い味。タンニン、酸味ともに弱い。ほのかに甘い。飲みやすいので好きかも。こってり系料理に合わせるには不向き。

 
【基礎情報】
銘柄:CRANE LAKE
原産地:Napa valley,CA,USA
品種:CABERNET SAUVIGNON
年代:2004
価格:$6



先日に引き続きホテル近くの黒人街のお店で購入。どうでもいいが、ネットで調べたら楽天で1300円で売ってた。関税と税金がどれだけかかるかしらないけど、結構儲かりそう。

感想
甘口。タンニンが弱い。酸味、匂いはなし。甘ったるさはあるけど、飲みやすい。2日目でも味はほとんど変らなかった。ハウスワインとかに向いてそう。コストパフォーマンスはいい。
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ナパのワイン① Sutter home, chardonnay, 2005

ここサンフランシスコは世界有数のワイン産地ナパのすぐ隣。
カルフォルニアワインは日本の2/3~半額程度で手に入る。

と、いうわけで毎日ワインを飲んでみる。

せっかく安くてウマいワインをたくさん飲めるので記録。
(ワイン ド素人)

 
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【基礎情報】
銘柄:Sutter home
原産地:Napa valley,CA,USA
品種:chardonnay
年代:2005
価格:$7

初日に買ってきたワイン。$7。ナパといったらシャルドネ!という思い込みがあり適当に近所のスーパーで買ってみた。…本当にシャルドネ!?ほのかに甘くフルーティー。フルーティーはいいけマスカットのようなフルーティーさ。渋みは一切ない。ワインダメだーって人にはお勧め。

…のみ安いけど、ワインとしてはアレはどうなんだろうという一品。ちゃんと調べて買わないダメだなと教訓。

Sunday, October 7, 2007

黒人街

San Franciscoは全米でも治安の悪い街
その中で最も治安の悪いJones Streetにあった3枚のWall Art

 

 

 
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I think people should know about this place

There is good people
There is bad people

So I think I just want people to know that just don't judge a book by it's cover. There is a lots more inside

Friday, October 5, 2007

シリコンバレーのベンチャーキャピタル① 

Date: 3 Oct 2007
Place: Financial place, San Francisco
Purpose: バイオ系ベンチャーキャピタリストインタビュー
People: 権藤尊睦様
   (学術博士。日系大手メーカー入社、現在Burrill&Companyで勤務)
Keyword:’血尿’ ‘LP’‘技術デューデリ’ ‘personalized’ medicine ‘’

シリコンバレーインタビュー第一弾。アメリカの大手バイオ系ベンチャーキャピタル(VC)のBurrill&Companyの中で日系メーカーのLP社員として働く権藤さんにインタビュー。以下掲載分は権藤さんに了解をとってあります。

1 権藤さん
2 Burrill&Companyとは?
3 投資手法(投資までの流れ、デューデリジェンス、投資サイズ)
4 バイオベンチャー投資の特徴と今後の流れ
5 感想


1 権藤さん

権藤さんは32歳のイケメン。こんがりゴルフ焼けしているが、とても清潔感がある。金融マンらしくストライプのシャツ&スーツ。さらに元研究者とは思えないくらい社交的。中身も外見もカッコイイビジネスマン。九州男児らしくお酒が好きで週3で飲んでいるとの事。インタビュー後飲みに連れて行ってもらったがビール、日本酒、ワイン存分にのんでいた。コッコイイ

大学院博士課程で食中毒を研究していた権藤さんはドクターまでいきながらなぜか就職活動時の第一志望が某ラジオ局。しかし偶然が重なりレンズを得意とする現医療機器メーカーへ就職。

約1年間実験を続けていたが、研究開発部門からシリコンバレーで新規事業のネタを探すため投資事業チームに抜擢された。シリコンバレーに渡り、ゼロからネットワークを気づき上げ、何十社もVCを回り、理想的な投資先を探した。

Burrill and Companyとかなりよい条件で投資をクロージングさせ、LP出向のアドバイザーとしてファンドに参加。日本人がほとんどいない業界の上、権藤さんのポジションを考えると若すぎる年齢と条件は厳しかった。だが血尿がでたほどの2年半に及ぶ努力の結果だんだん認められるようになって、ベンチャーキャピタリストとしても一流になった。


2 Burrill and Companyとは?

 Burrill and CompanyとはVenture Capitalを主軸にInvestment Banking、Publicationの3つのサービスを提供するプロフェッショナル集団。バイオ系VCとしては業界2nd tier。現在3つの主要なファンドを抱え、サイズは総額約1,000億円。投資銀行やメディアチームを含め総勢50名近くのスタッフを抱えVCとしては非常に人数が多い。



Burrillの特徴①ヒューマンリソースの外部調達

 Burrillは特有のファンドのスキームを持つようだ。普通のVCは出資者がLP(Limited Partner)と言う形でファンドに出資し、ファンドはLPから金だけをもらい投資をする。投資スタッフは業界でスゴイ人たちを中心に、10人以下の少人数。LPに対しては年に1度~数回投資方針、投資結果などを連絡。

Burrillの場合はそれに対し社員50名。LPからの出資を受けると共にアドバイザーとして人も受け入れている。権藤さんはこのポジション。LPの構成は専門性の強いメーカーなどが中心で血管系疾患、癌、炎症性疾患などの治療薬を開発している創薬メーカーが主流。診断系メーカーも参画している。

医療・ヘルスバイオの中でも少しずつ分野を変えて、1社づつ被らないように出資をつのりシナジーを生み出している。結果として広い分野をカバーするため人数が多くなる。そして週に1回LPへの報告を兼ねてアドバイザーを交えた投資Mtgを行う。

このスキームの優れた点はファンドと出資者のWin-Winが成り立つこと。VCとしては、スーパーベンチャーキャピタリストを自社で抱えなくても他社リソースを上手く活用できる。出資メーカーとしてはVCに集まる最新情報を利用して技術のファインディングができる。


Burrillの特徴②多量の審査案件

 多くのVCは少数のパートナーのネットワークから質の高いごくわずかな投資案件を審査する。Burrillでは年に800件近い案件を審査している。創業者G. Steve Burrill氏がアーネストヤング出身でバイオのバックグランドをもつ専門家ではなかったことが始まりだ。

スーパースペシャリストでないため情報が集まってくるネットワークを構築する必要があった。そこで、社員が多いという点を活かしアナリストにできるだけ多くのファインディングをさせて審査している。スタッフが多くカバー範囲が広いからこそできる芸だ。審査件数は多いものの実際に審査を通過するのは年数件程度である。


Burrillの特徴③ハンズオン投資

 多くのVC同様(日本のVCとは違い)Burrillでも資金を入れる際はリードインベスターをとることもありボードメンバーを送り込んで、経営に対する口出しもする。アクティビスト的投資スタイルはアメリカVCの特徴でもある。投資対象のステージはアーリーからレイターまで様々。


3 投資手法(投資までの流れ、デューデリジェンス、投資額・期間)

①毎週のMtgの流れ

 ⅰ投資先のモニタリング
 ⅱ新規案件の審査
 ⅲ継続モニタリング中の新規可能性案件の審査

Burrillでは以上のような順でMtgを行っている。機密情報なので中身は見せてもらえなかったが、数百ページの分厚いドキュメンテーションは迫力があった。新規案件はアメリカ・ヨーロッパだけでなく中国、インド、日本などもサーベイして投資可能性を探っている。

近年中国オフィスもつくったようだ。実際に投資に繋がる案件は最初の検討からあまり時間がかからないらしい。ⅲで長期間モニタリングしている企業は投資まで繋がるケースは少ないとのこと。投資まで早いケースだと2ヶ月程度。権藤さんのメーカー自身のベンチャーへの直接出資と比べるとスピード感は全然違うらしい。


②デューデリジェンス

 バイオの場合は技術デューデリがメインになるとのこと。バイオ系の知識が全くないのと、難しいのとでよく分からなかったがデューデリのポイントは「実際にどれだけ効くか、精度がどれだけ高いか」らしい。それも製品になる前のベース技術段階で評価しなければならないことも多く非常に難しそうだ。

例えば薬の場合。製品化されるまでに4つのフェーズがある。

前臨床::動物実験(正常に作用するか、副作用がないか)
フェーズ1:健常者への毒性予測(人に効くか、副作用がないか)
フェーズ2:薬効の容量設定(どの位の容量での効果があるか)
フェーズ3:目隠し実験(プラセボ(偽薬)などを用いて優位性をチェック)

全部のフェーズをクリアしてFDA(米国版厚生省)から認可が下りるまでに10年近くかかるらしい。どのフェーズで投資をするかも重要だし、投資をしたところで次のフェーズをクリアできなければ投資失敗ととてもリスクが高い。

ITやウェブ業界へのVC投資はマーケットトレンド(「エンタプライズ」「SNS」「仮想空間」などの消費者トレンド)が企業評価に与える影響が大きい。いい技術を持っていてもマーケットトレンドから外れていると評価は下がる。

しかしバイオの場合は消費者トレンド(そもそもあまりトレンドがないのかも)が与える影響は低いようだ。ただ投資対象としては製品化が成功した場合マーケットサイズが$100mill以上あるものが最低ラインと言う基準はあるとのこと。


③投資額・投資期間

 BurrillではシリーズAで投資する場合は$5million程度。シリーズB,C、Dから投資をはじめる場合もあり、また追加投資も行っている。投資期間は5~10年と長い。これはバイオ系の特徴で製品化までの期間が長いことに起因する。


4 バイオベンチャー投資の特徴と今後の流れ

①バイオベンチャー投資の特徴

・ 投資期間が長い
・ 技術中心の評価
・ アメリカが市場の中心

上2つは,3投資手法(投資までの流れ、デューデリジェンス、投資額・期間) 参照。市場の中心がアメリカというのは制度的な問題も大きいらしい。厚生省は新薬の使用許可に対して保守的で申請から許可までに長い時間がかかる。

それに対しFDAは新薬導入に積極的で短期間のうちに許可を与える。また学会ではほとんどが白人、ほんの少しの中国人、黒人はまずいない、とのこと。体の中に関わるデリケートな分野ということもありある程度無意識の差別が働いている可能性もある。ただ近年この傾向は是正されているみたいだ。

②今後の流れ

 権藤さんはpersonalized medicineがバイオ系の主流になっていくのではないかと予想していた。


Personalized medicine is the use of detailed information about a patient's genotype or level of gene expression and a patient's clinical data in order to select a medication, therapy or preventative measure that is particularly suited to that patient at the time of administration. (from Wikipedia)


personalized medicineとは個人の遺伝子情報を元に個々の患者に対して最適な治療を施す医療方法。ついに遺伝子情報を読み取る時代がくる。病気により最適なアプローチが可能になるのは嬉しいが、ちょっと怖い。


5 感想

 シリコンバレーのVCは日本のJ○F○OやN○Fといった大手VCとはあまりに違いすぎてびっくりした。このVCは比較的サイズの大きいサラリーマンVCだがそれでも専門家を上手い仕組みを作りビジネス(技術)をしっかり見ている。

J○F○OやN○Fのようにたくさんの企業に対しマイナー投資でポートフォオを組み、組確率論で利益を上げているようなVCとは異質だ。(一緒に言ったあなすっちゃーがいうに「日本のVCは未公開株投資信託」)

このようなLPを上手く利用した形のVCは優秀なベンチャーキャピタリストが不足している、日本でも利用可能なモデルではないだろうか。リードインベスターを勤め、人を送り込めるハンズオン方のVCがベンチャーを育てるためにも日本にもっと必要だろと話を聞きながら感じた。
 
 権藤さん、本当にありがとうございました。

Tuesday, October 2, 2007

シリコンバレーの休日①

Date: 29 Sep 2007
Place: Glen park 外村さん宅と近くの公園
Purpose: まりこちゃん(外村さんの娘さん)誕生日会
People:外村仁様(Bain、Apple、Generic Media、現First Compass Group Partner)
     漢城かおる様(日本Coca-cola,Palm Inc,現A2Z LaunchのFounder)
     木田様(現米Apple 現在iPhoneの日本語環境を作っている)
Keyword: ‘iPhone’ ‘Organic food’ ‘Rolly’ ‘Bravia ad’ ‘Kyenote’

 9月29日。サンフランシスコ入り2日目。昨晩をメールチェックしたら外村さんから突然のメールで、娘の誕生パーティーに誘われた。「会社で話しを聞くだけだと、シリコンバレーで生きる事の半分しか分からないと思う。コミュニティに混ぜてもらう事は、とってもとっても大事」とのことで、まだ先日のアラスカ・ベリーズ旅行気分が抜け切らないまま誕生パーティーへ。

 PowellからBardに乗ってGlen parkへ。そこからバスに乗ってサンフランシスコを一望できる丘の上の公園へ到着。雲ひとつない澄んだ青空が頭の上に、目の前には太陽に照らされ白いレンガのサンフランシスコの町並みが広がる。気持ちいい日だった。



 外村さんに初対面。そこにいたのは世界規模のサービスを作り出し、十数億円をVCから引き出したスーパーアントレプレナーではなく、この日6歳になる娘をはじめ3人の子供をこよなく愛す素敵なパパだった。公園には続々マリコちゃんのお友達とそのパパ、ママが集まり始める。なんと総勢30名近い大集団に。さすがはアメリカンパーティー。

でかいのは集団だけじゃない。容易された遊び道具も。15m×3mくらいの巨大なジャンピングハウス(空気を入れて膨らませる家。遊園地の屋上とかによくあったやつ)が用意された。その他にクリスピードーナッツのパンくい競争も。(日本上陸した時に、新宿で3時間並んで買ったやつだー)

 この時びっくりしたのはパパ、ママはみんなiPhoneを持ってる!初めて本物を触らせてもらって大興奮。それも解説をしてくれているのはアップル本社でiPhoneの日本語環境を作っている木田さん。贅沢すぎる。ちょっとiPhoneの感想。

まずインターフェイス。Appleらしくシンプルで洗練されたボディー。タッチパネルの感度は驚くほど高い。軽く触れただけでもちゃんと反応し、操作方法もきわめて直感的で分かりやすい。指の動きに合わせて画面が動く。次にソフト。ネット上で使えるものは全て使える上、グーグルのコンテンツは初期登録されている。

特にグーグルマップには大感動。カーナビと同じ感覚で使える上、コーヒーを飲みたくなったら近くのスターバックスを地図上で検索できる。コンビニも郵便局もすぐに探せる。You-tubeもPCで見るとサイズが小さく見にくいがiPhoneの画面だとフルスクリーンで画像が全く荒れないから見やすい。

唯一の欠点はAT&Tと契約しないといけないことくらいか(Docomo限定みたいなイメージ)。日本で出たら絶対買おう。木田さん早く作ってください。


シリコンバレーの休日②

 iPhoneの感動につかる間もなく、子供たちと真剣に遊ぶこと3時間。何度もススキの剣できられ、シャボン玉鉄砲で打たれ死んだ上、ジャンピングハウスの滑り台を子供を担ぎ何往復もしたため息切れが激しくダウン寸前。外村さんの家へ移動して夕ご飯。

子供たちとWillで遊んでる間に外村さんと漢城さんの夫のグレークがとてもおいしいアジア料理を作ってくれた。バーナーで表面をあぶったサーモンと飛魚出汁の味噌汁は絶品。外村さんはかなりのおいしいもの好きだそうです。食材にもこだわっていて、自分で台所に立つこともよくあるらしい。カッコイイ

カルフォルニアには外村さんみたいなオーガニックフード好きがたくさんいるらしい。氏曰く「子供が野菜嫌いなのは、おいしい野菜を食べていないからだよ。生で食べても甘いニンジンもある。うちの子供は野菜が大好きだ。」と。納得。そんなおいしい野菜を食べてそだった子供たちは元気いっぱだった。


 食後はダンス。でぃすこーDiscoディスこぉー♪と踊るのは外村さんではなくSonyの’Rolly’。



 世界で先駆けてこの日日本で発売されたRollyがなぜかサンフランシスコのこの家に。やっぱりただものではないぜ、外村さん。氏いわく「商業的に成功するかどうかは分からない。けれど、Sonyがコレを作ったことが嬉しい。」「このソフト面を評価してあげて欲しい。みんなハードばっかり評価するからね。コレも、音質がよかったら評価が大分高くなるんだけど」と。

ソフトの時代だ!と叫びながらも実際はハードが重視されるという矛盾は面白い。4万円と高くて買えないけど、あったらパーティーとかによさそう。SonyつながりでBraviaのCMの話題に。フランスの広告会社が作成したコレ2つ。日本ではやってないらしい。クオリティー高い。キレイすぎる。



 今日ふと立ち寄ったPlaystation3カフェ(?)で遊んできたプレステ3でも感じたけど、なんだかんだいってSonyのアウトプットのクオリティーはoutstanding。近頃のSonyはSonyらしく面白くないと言われているけど、RollyをきっかけにまたイケてるSonyになって欲しい。

 そんなこんなで、快晴のもとパンくい競争をして、キングサーモンのあぶりを食べて大満足な誕生会でした。外村さん本当にありがとうございました。