Friday, December 9, 2011

ヒューマン・アービトラージ、矢島金太郎・鷲津政彦

昨日出会った方の考え方にとても共感した。

海外の大学を卒業し、日本で外資系投資銀行の自己勘定投資部門で企業買収を数年間仕掛け、最近自分でファンドを立てられた、というプロファイルの方だ。

実は5,6年前一度お会いしていたので、今回先輩を経由しての出会いで大変楽しみにしていた。概して、この手のプロファイルの方はスマートで、ディスカッションをすると知的好奇心を刺激されとても楽しい。ただ、事業家の持つ特有の想いや、人材への考え方は共有できず、経済合理性とキャピタルゲインの話が中心になりがちである。

ただ、今回の出会った方は自己の欲ではなく、日本への貢献に主軸をおいており、事業家の私はとても感銘を受けた。

彼の主張の中で2つ印象的だった話があった。

1つは「ヒューマン・アービトラージ」という考え方。至極単純な考え方で、優秀な人間が非効率な業界・会社の中で想いを持ち、リスクをとって、合理的に経営を展開すれば、業界全体の効率化・活性化を実現できる、という考えだ。

アメリカでは一流大学を卒業した学生が平気で中小企業に入り、活躍しイノベーションを起こす。一方で日本の学生で東大を出た学生は東大阪の一流中小企業には就職しない。(雇用制度と右へならえの思考が関係するのだと思う)

その為日本では大企業と中小企業のビジネスでの人材の差が大きく、アービトラージの余地が存在しており、大企業(もしくはプロフェッショナルファーム)で経験を積んだ若手が入れば比較的簡単に収益強化を実現できるという考えだ。技術面での人材格差より、ビジネス面での人材格差の方が大きく、結果として業界の知見・経験は乏しくとも、優秀な人間が入れば十分に収益強化はできるというアービトラージ。PEの基本的な考え方なのだろうが、「私たちは優秀だから他の会社より上手くできます」と言い切れるところに率直に感心した。(そしてそれは事実だろう)

2つ目は「日本ではPEファンドビジネスが成り立たない。それでも、ファンド的アプローチが日本の活性化に必要だ」という考え。

小泉・竹中改革のその後の頓挫により日本では開かれた資本市場は普及せず多くの資本と投資ファンドが日本を去った。PEファンドビジネスは入り口がなく出口がない状況で経済合理性がないというコンセンサスが出来上がった。

そんな中で、(儲けを一番に置くのではなく)日本で産業活性化に必要なのは、人材不足の成熟産業に人材を送り込むことであるという信念を貫き、ファンドをレイジングしスタンスを取った投資を行うという行動に感化された。

矢島金太郎や鷲津政彦に通じる凄み、を感じた。

自分も日本に対して何ができるのか、ということを改めて考えさせられ、自分の軸を貫き通す、社会のために何を行えるのかという視点を常に持ち続けることの重要性を再認識させられた。

こういった自分の価値観に影響を与えてくれる出会いに感謝です。